学会派遣プロジェクト

AASLD The Liver Meeting 2025 参加報告

並木雄央(M4)

この度、私は2025年11月7日〜10日の4日間、アメリカ・ワシントンD.C.のWalter E. Washington Convention Centerで開催された米国肝臓学会 The Liver Meeting 2025(AASLD)に参加し、ポスター発表を行う機会をいただきました。はじめての国際学会への参加とポスター発表という、非常に貴重な経験となりましたのでここにご報告いたします。

私は一年間、本プログラムの Oncologic Research Course に所属し、消化器内科の山田友春先生のご指導のもと、肝疾患におけるバイオマーカー研究に取り組みました。東京大学消化器内科で蓄積されている肝細胞癌のデータベースを用い、とくに本邦から世界に発信しているラジオ波焼灼療法(RFA)症例に焦点を当てて解析を行いました。RFA後の再発率が高いことに着目し、「どのようなバイオマーカーが再発リスクを予測しうるか」という問いを立て、近年さまざまな悪性腫瘍で注目されている好中球リンパ球比(Neutrophil-to-Lymphocyte Ratio: NLR)と再発との関連を検討する研究を進めました。
こうした取り組みを評価していただき、山田先生から「AASLDに演題を出してみてはどうか」とお声がけをいただいたことがきっかけで、今回の国際学会発表へとつながりました。指導医の先生方のお力添えなくしては決して実現しなかった機会であり、改めて深く感謝しております。

 The Liver Meeting 2025は、アメリカ全土、さらには世界各国から肝臓に関わる専門家が一堂に会する、大規模かつ熱気に満ちた学会でした。参加者は医師だけでなく、看護師、薬剤師、研究者、企業関係者など多職種にわたり、まさに「肝臓医療・研究のハブ」といった雰囲気でした。
セッションの構成や企業ブースの顔ぶれから、疾患ごとの「注目度」の違いも強く印象に残りました。今回とくに目立っていたのは、SLD や PBC をテーマとしたシンポジウムや口演で、多くの座長・演者が集まり、企業展示でも関連薬剤やデバイスが数多く紹介されていました。一方で、中塚拓馬先生から「10年前はC型肝炎一色で、スポンサーもC型肝炎治療薬関連がほとんどだった」というお話を伺い、時代の流れに応じて学会の主役となる疾患やトピックが大きく変遷していく様子を実感しました。流行の移り変わりが早く、その変化をダイナミックに取り込んでいく点は、アメリカらしさでもあると感じました。
また、大規模なPhase3臨床試験を実施している先生方による発表も多数あり、「世界のガイドラインや標準治療を動かしていく研究」がどのように組み立てられ、発信されているのかを、現場で肌で感じることができました。

ポスター会場では、参加者が自由にポスターの間を行き来し、興味のある演題の前で立ち止まって研究者と直接議論するスタイルが取られていました。視界の先までポスターがずらりと並ぶ光景は圧巻で、限られた時間と情報の中で「どの演題に足を止めてもらうか」という意味でも、わかりやすく整理されたポスターデザインの重要性を強く感じました。実際に歩いてみると、「一目で研究の問いとメッセージが伝わるかどうか」が、立ち寄っていただけるかどうかを左右しているように思いました。
テーマも実に多彩で、「このような視点で肝疾患を研究しているのか」と驚かされる演題も少なくありませんでした。肝疾患研究の裾野の広さと、臨床・基礎・トランスレーショナルリサーチが有機的につながっている様子を間近に見て、自分自身の研究テーマ選びや今後のキャリアを考えるうえでも大きな刺激となりました。
私のポスター前にも、何人かの先生方が足を止めてくださり、解析方法や背景肝の評価、NLRの解釈などについて質問やコメントをいただきました。英語で淀みなく議論を進めるにはまだ力不足を痛感しましたが、自分の研究デザインの限界や、今後どのように発展させうるかについて、1対1でじっくり意見交換ができたことは大変貴重な経験でした。オンラインでは得がたい、「その場で相手の反応を見ながら深掘りしていく対話」の価値を改めて実感しました。

会期中の午後には、中塚先生、山田先生にワシントンD.C.市内をご案内いただきました。ホワイトハウスやリンカーン記念堂など、アメリカの政治と歴史を象徴する場所を実際に歩きながら見学し、日本とは異なる都市のスケール感や空気を味わうことができました。
夜には、建石良介先生、奥新和也先生、門 輝先生、中塚拓馬先生、山田友春先生とシーフードレストランで食事をご一緒させていただきました。普段なかなか伺えないお話を和やかな雰囲気の中で伺うことができ、非常に充実した時間となりました。学会での学びに加え、こうした場での対話も含めて、「臨床研究者としてどのように歩んでいくか」を考えるうえで大きな糧となりました。

国際学会への参加、とくに発表まで行うことは、学生にとってハードルが高く感じられることも多いと思います。今回私が一歩を踏み出せたのは、「臨床研究者育成プログラム」という枠組みと、海外学会参加を後押ししてくださる体制が整っていたおかげです。渡航費・参加費の支援だけでなく、日常の研究指導から抄録作成、発表準備にいたるまで、多くの先生方に丁寧にご指導いただき、その積み重ねが国際学会での発表という形になりました。
このような手厚い支援体制は、全国的に見ても決して当たり前のものではなく、本学ならではの大変貴重な制度だと感じています。本プログラムに関わるすべての先生方・事務の皆様に、心より御礼申し上げます。

 後輩の皆さんには、ぜひこの制度を積極的に活用し、興味のあるテーマで臨床研究に挑戦してほしいと思います。英語や統計に不安があっても、実際に取り組んでみることでしか得られない学びが数多くありますし、海外学会で自分のデータを提示し、世界の研究者と議論する経験は、将来どの診療科・どのキャリアを選ぶにしても大きな財産になると感じました。今回のAASLD参加で得た刺激と反省を今後の研究・臨床に活かし、臨床研究者育成プログラムの名に恥じないよう、さらに精進していきたいと思います。

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