臨床研究個別プロジェクトコース

臨床研究個別プロジェクトコース紹介

Metabolism Research Course

遺伝素因と環境因子の相互作用による異所性脂肪蓄積や虚血、酸化ストレス・小胞体ストレス等の細胞内ストレスの異常、慢性炎症等と臓器連関の破綻等に伴って発症するメタボリックシンドロームや糖尿病、CKD、心血管疾患などの生活習慣病に興味を持つ学生・研修医を対象としたコースです。糖尿病・代謝内科、循環器内科、腎臓・内分泌内科、老年病科が参加しています。

遺伝子改変マウスやヒト組織サンプルを用いたトランスクリプトームやプロテオーム解析に加えて、遺伝素因を解明しようとするゲノミクス研究、並びに環境因子を解明しようとするエピゲノム研究やリピドミクスを含めたメタボロミクス研究が近年、急速な発展を遂げており、多因子疾患のため、その原因解明がこれまで困難であった生活習慣病の発症・増悪の分子メカニズムを解き明かせる時代が今まさに到来しようとしています。これらの実現には、生化学や分子生物学、発生工学等の基礎医学や、莫大なデータを適切に取り扱って処理・解析する統計学や数学も必要ですが、DiseasesあるいはPatientsを鋭く観察して深く洞察する臨床家としての力も、解析技術が発達した今だからこそ、より重要になってきていると考えられます。

これらの背景から、複数の部門がコンソーシアムを形成して医学生や研修医などに、生活習慣病の臨床・研究について系統的な教育・研修の機会を提供する本コースは有用と考えます。このコースへの参加をきっかけに、今後の生活習慣病の研究・医療にともに携わって頂ける方が出てくれればと思います。このコースは抄読会と若手研究者のデータクラブを基本としていますが、希望に応じて、研究への参加なども行っています。皆さんの積極的な参加をお待ちしています。

  参加代表教員 アドバイザー
糖尿病・代謝内科 岩部(岡田) 美紀 山内教授
循環器内科 赤澤 宏 小室教授
腎臓・内分泌内科 稲城玲子 南学教授
老年病科 小川純人 秋下教授

活動内容

  • ジャーナルクラブ・データクラブ
    月1-2回程度、各科の持ち回りで行っています。基礎・臨床における最新の話題、重要な論点などを含む海外の一流誌の論文を、担当教員(あるいは大学院生)の指導のもと、担当学生・研修医にプレゼンして貰っています。また、毎回2,3人、若手研究者を中心に、自身が行っている臨床あるいは基礎の研究データも発表して貰っています。ジャーナルクラブ・データクラブともに、参加者全員でディスカッションをとことん楽しんでいます。
  • 学術活動への参加・実習
    ジャーナルクラブ・データクラブと平行して、参加学生・研修医の希望に応じて研究室の見学、研究活動への参加等を臨床研究個別プロジェクトコースとして行っています。
  • 臨床研究個別プロジェクトコース
  • テーマ(1) 「高齢者における生活習慣病と認知症・フレイルとの関連」
    目的と方法 社会の超高齢化を迎えたわが国において糖尿病は増加の一途をたどってきている。近年、糖尿病・高血圧症をはじめとする高齢者生活習慣病と認知機能低下やフレイルとの関連性について注目されるようになってきている。高齢者で認められる生活習慣病の罹病期間や重症度等が、認知機能やフレイルに対してどの程度影響を生じるか、当院・当科症例を対象に後ろ向きに検討する。
    発表を目指す学会 日本老年医学会など
    老年病科
    小川純人
    テーマ(2) A:「心不全における心腸連関の病態解明」
    B: 「モデルマウスを用いたマルファン症候群の病態解明」
    目的と方法 A: 腸内細菌叢とヒト宿主との共生関係が、宿主のエネルギー摂取や代謝、免疫システムに大きく関与し、腸内細菌叢の構成異常によって炎症性腸疾患や糖尿病、メタボリックシンドロームなどが発症しうることが報告され、大きな注目を集めている。心不全における血行動態の異常が腸内細菌叢の構成異常を引き起こし、そのことが心不全をさらに進展させるという「心腸連関」という新しい概念を構築し、その研究成果を基盤として新たな治療ストラテジーを確立する。具体的には、心不全の病態修飾に関わる腸内細菌種や腸内細菌由来代謝物の同定や、心不全における腸内細菌叢と腸管上皮のクロストーク機構の解明を目指す。
    B: マルファン症候群はFBN1遺伝子の変異によって生じるが、病態形成にはTGF-bシグナルの過剰な活性化が深く関与していると考えられている。一方で、アンジオテンシンII(Ang II)1型(AT1)受容体阻害薬はTGF-bシグナルの過剰な活性化を抑制することで大動脈瘤に対する治療効果が期待されている。私たちはAT1受容体がメカニカルストレスにより活性化し、心血管疾患の病態形成に関わることを世界に先駆けて明らかにしてきた。AT1受容体を介したメカノセンシング異常が本疾患の病態形成に果たす役割を検証し、その制御による新たな治療戦略を探索する。
    発表を目指す学会 日本循環器学会学術集会
    循環器内科
    赤澤宏
    テーマ(3) 基礎研究
    ・CKD進展における低酸素 biology に関する最先端研究
    ・CKDモデル動物の血清・尿のメタボローム解析から新たな尿毒素の同定、その病態生理学的活性の解明
    臨床研究
    ・糖尿病性腎症患者血液・尿のメタボロミクスに基づく 新規の腎症進展予測バイオマーカーの探索
    目的と方法 基礎研究:CKDに対する早期診断のバイオマーカー探索や予防・治療薬(特に腎機能低下を改善する)の標的分子の同定を目指し、CKDモデル動物や腎臓株化細胞を用いて低酸素や代謝異常(脂質異常、高血糖)に対する腎臓の適応応答とその破綻が腎機能低下に及ぼす影響を分子レベルで解明する。
    臨床研究:糖尿病性腎症患者の中には急速に糖尿病性腎症が悪化し透析導入になる患者群(rapid decliner)がいる。そうした患者群の早期診断に有効なバイオマーカーを探索する目的で、糖尿病性腎症患者の尿・血漿を用いて腎機能推移と相関して変動する尿中・血中代謝産物を抽出する。
    発表を目指す学会 日本腎臓学会、国際腎臓学会、日本Uremic Toxin研究会など
    腎臓・内分泌内科(CKD病態生理学講座) 
    稲城玲子
    テーマ(4) 「肥満2型糖尿病発症・増悪に関わる鍵分子の探索」
    目的と方法 メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満症や認知症、フレイル等の生活習慣病や加齢関連疾患は、遺伝素因と環境因子の相互作用によって発症・増悪することが知られているが、未だ根本的な予防・治療法の確立に至っていない。ゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム・メタボローム等や臨床情報を統合的に解析して、鍵分子を探索する。
    発表目標 臨床研究者育成プログラム春の研究報告会で中間発表し、最終的には、論文化を目指す。
    糖尿病・代謝内科
    岩部(岡田) 美紀

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