臨床研究者育成プログラムの開始にあたって



実行委員会・委員長 
山本一彦 

東大医学部学生および臨床研修医を対象として、医学における研究の重要性を知ってもらい、また少人数での医学論文の抄読や研究の実際に接する機会を設けるなど、研究者としての考え方の基礎となる教育を主眼とした「臨床研究者育成プログラム」をスタート致します。本プログラムはレクチャーシリーズとそれぞれの研究領域の臨床研究個別プロジェクトコースから構成されています。既に開始されているMD研究者育成プログラムと並行して、本学部における研究者・研究医育成教育の充実にあたるプログラムの一つです。

なぜ臨床医にとって研究は必要なのでしょうか?多くの臨床医は、まず専門医を目指し、さらに自らの臨床医としての知識、技術などを高める努力を一生続けなければなりません。医学の情報は1人が修得するにはあまりにも膨大であり、技術も多岐にわたります。従って、一生かかっても、おそらくこれらを極めることはできないであろう高いハードルです。ですから、研究などする余裕はなく臨床だけで精一杯だ、という考えも十分に理解できます。しかしそれでは、医学部出身者がみんな臨床医としての技量を高める方向に向かった場合、誰が現在の医学を先に進めるのでしょうか?議論を待つまでもなく、臨床医学にはまだまだ解決しなければならないことが山積しています。これを進めるには研究しかありません。一方、将来臨床の現場で仕事をしようと考えている医師にとっても、ある期間きちんと研究をすることは、その後の臨床医としての医学全体の理解に厚味ができ、また臨床に根ざした研究に参画しやすくなると思われます。これらのことを背景に、東大医学部は、今までもそして今後も、臨床医育成とともに研究医の育成の方向性を堅持します。

本プログラムが対象とする方は学部学生と臨床研修医です。主としてM3以降の学生を対象としますが、M1-2の学生の参加も自由です。臨床研修医の方、特に他大学出身の方は、本学での研究の様子をより詳しく知っていただくのに良い機会と考えます。レクチャーシリーズは学外の研修医の方の参加も自由です。

少人数コースはそれぞれの研究領域を推進している複数の臨床科や講座の教員で構成するコンソーシアムで運営されます。内容はそれぞれのホームページをご覧下さい。臨床研究個別プロジェクトコースは登録制です。特に学外の病院の方は、それぞれのコースの責任者とご相談下さい。これは特に患者さんの情報に触れる可能性がある為の配慮です。頑張った学生諸君には、合同の発表会や各学会への参加補助などの奨学金も予定されています。

基礎系研究者を主眼としたMD研究者育成プログラムが進行する中で、臨床系研究者の育成について検討するように清水研究科長より要請があり、ワーキンググループが立ち上がったのが2008年1月でした。以後10回以上の多くの議論を経て、現在の形での立ち上げを提案させて頂きました。しかしながら実際にスタートした後には改善すべき点も多く見つかると思います。学生の皆さんを含めた参加者全員の活発な議論と工夫で、東大医学部の臨床研究者育成の為のより良い方向性を探って行きたいと思います。

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